企画・特集
高齢者ホーム 安全の実情
(下)高齢者下宿
(2010年 3/20)
下宿の居間で団らんする入居者 |
激しく燃える建物。懸命に消火作業に当たる消防署員。3月13日、札幌市のグループホーム火災を放映するテレビのニュース番組を目にし、苫小牧市内にある高齢者下宿の女性管理人は「対岸の火ではない」と、戦慄(せんりつ)したという。
この下宿は、数年前に民家を改修して開業し、高齢者を受け入れている。常に介護が必要な車いすの人もいる。
札幌の火災を受けて女性管理人は、下宿を運営する会社に、建築基準法に基づく建物の用途変更手続きを済ませているかどうか問い合せた。住宅から下宿へ用途変更した場合、防火対策が厳しくなるが、会社の回答は「していない」だった。火元には細心の注意を払っているが、女性管理人は不安を抱き、建物の用途変更手続きをすぐに行うことを会社側に約束させた。
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入所の待機者であふれる老人ホームやグループホーム。行き場を失った人たちの受け皿として高齢者下宿が全国各地で増えている。一方、経費が掛かる防火対策を避けたり、安易な考えから、未届けで運営している施設もあり、安全管理の面で課題を抱えている。
市内の高齢者下宿は昨年、苫小牧市消防本部の立ち入り検査で防火設備の不備を指摘された。消火器さえ置いていなかったからだ。指摘を受けて消火器をすぐに設置し、火災通報装置の見積もりも取った。余裕のない経営の中で簡単に出せる金額ではないが、「安全を考えて取り付けたい」と管理人は話す。
別の下宿に入居する80代の女性は「自分は足が悪いので逃げ遅れるのではないか。火災のニュースを見て、そう心配になった」と不安そうに話した。
この下宿は、住宅用火災警報器を入居者の個室と廊下に設置。火災通報装置の導入も検討しているが、これまで避難訓練をしていない。経営者は「消防と相談しながら、近く訓練をしたい」と話した。
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市消防本部は昨年5月、把握している高齢者下宿など12施設に立ち入り調査をした。その結果、大半が一般住宅を改修した施設で、避難路が確保されていないなど防火上の問題点も目立った。カーテンやじゅうたんなどを、燃えにくい防炎製品にしていない施設もあった。また、10施設で自力避難の困難な入居者を確認した。
同本部は「高齢者が入居する施設としては、防火対策に課題がみられた」と指摘する。
家庭的な雰囲気の中で、寂しさを感じずに老後を過ごせる利点も注目され、ニーズが高まる高齢者下宿。管理する女性は「防火設備を整えたい、しかし、ゆとりがなく、公的支援があるといいのだが」と訴え、地域の高齢者施設を社会全体で支える必要性を強調した。
(この企画は河村俊之、高田晴朗が担当しました)


